ナグリ(コロガシ)
 歴史としては友釣りより古いらしい。私は川が近くにあったせいで小学生の頃からナグリをしていました。友釣りを始める20歳半ばまではずっとこの釣りでした。友釣りを始めてからは遠退いていたのですが、数年前から増水時にはナグリをするようになりました。勝浦川で鮎を釣って商売としているプロの技を見聞きしカルチャーショックを受けたものでした。
 私は全くの初心者ではありません。しかし並んで釣っていても、私が40匹釣る間にプロの方は400匹を釣ります。道具、仕掛けは同じなのに、この歴然とした差は技術の違いです。彼等はナグリは「釣り」ではなく「漁|だと豪語します。何匹とは数えません、何キロ獲ったと言います。すごいですね。そんな勝浦川のプロのナグリ釣りを紹介します。

  • 竿

  •  ほとんどの人は8m竿を使います。ナグリ専門の竿としてはダイワの葉月が圧倒的に多いです。私は幻の鮎竿とのうたい文句に釣られて購入したロックオンの鮎闘8m。友釣り用のがまかつ激流引き抜き8mとか硬めの友釣り用竿の穂先を切りつめて使っている人も多いです。重さは300g台が良い。400gを超えると終日振り回すのは大変です。

  • 仕掛け

  •  大体がこんな感じです。カラー天井糸1mほど付ける人もいます。ラインが良く見えるので良いようです。
     ラインは私はPEの0.6号を使っていますが0.6号〜0.8号ナイロンの人が多いようです。深いところではワイヤー単線を使う人もいます。
     超小型サルカンをナマリ上15cmくらいの位置に付けてナイロン0.6〜0.8号でナマリと結びます。こうすれば根掛かりした時にはこのナイロン糸で切れるようにします。その方が釣り場を荒らさないし交換も楽です。
     オモリは3〜5号の中に穴が空いているもの。タコ糸を通して両端にコブを作ります。このコブにチチワにしたラインをトックリ結びで結びます。オモリ位置は竿尻より50cmくらい上が良いです。立ち込んで釣る場合が多いので竿を振りやすいです。
       ナマリから下のラインは0.8〜1.2号と上のラインより太くしている人が多いようです。
     ハリはチチワ、直結のどちらでもいいようです。両掛けの8〜9号を3本つけます。これより多くしてはダメです。私が一番抵抗を感じたのはこの本数でした。市販の仕掛けは7本ですかね、私は5本と教わってきました。しかし3本がベストなんです。何故か? それは使ってみればわかりますが、ハリの根掛かりが少ない、ハリ交換が少ない、カラミが少ないなどので手返しが早くなる。大体が後ろの2本に鮎は掛かってきます。ハリが少ないって? そんな心配はいりません。これで2匹、3匹と同時に掛かってくる場合がありますから。長年の経験から産まれた漁師の仕掛けです。ハリは3本。鉄則です。

  • 竿の引き方

  •  竿を振って自分の立つ位置とほぼ同じかやや下流にナマリを投入します。この方法については後述します。投入したら竿先を水面スレスレに1〜5の順に流れに乗せて竿を引きます。と簡単に言いますが、これが難しい。ここで素人とプロの違い、40匹と400匹の差が出ます。
     1に打ち込み5まで引きますが、その間にナマリが底石に2〜3回当たるのが良いとされます。これは流れの速さ、深さ、引くスピード、ナマリの重さ、ラインの太さ、竿の硬さ、風の強さなどなど。遅すぎると根掛かり、速すぎると仕掛けが宙に浮いてしまい鮎は掛からない。根掛かりすれば反対側に竿をあおって引けば大体は外れる。
     一定の速さで引く、いわゆる棒引きでも掛かりますが、引いては緩め引いては緩めを繰り返します。根掛かりも多くなりますが鮎の掛かりも多いです。また、途中で深くなっているようなポイントでは引く速度を緩めます。これらの操作が非常に難しい。ここでプロとアマの差が出ます。
     以上が基本と思いますが、縦引き、斜め引きもします。縦引きとはテトラ際などポイントが狭い流れになっている所は上述の投入は出来ません。そこで流れの下流に仕掛けを打ち込んで上流に引き上げてくる釣り方です。これも一定に引いたり、緩めては落とし込んだりと多様です。逆の上流に打ち込んで下流に引く方法もあります。皆さんが釣れないポイントですので大物が掛かったり入れ掛かりになったりします。斜め引きとは縦引きより少し斜めに打ち込んであとは縦引きと同様です。この縦引き、斜め引きがプロの技と思います。私も真似をして挑戦したことはありますが、まだ1匹も釣ったことはありません。結構難しいです。
     勝浦川でNO1と言われるK氏は重い目のナマリで強引に引きます。1〜2投目はナマリを石に当てないよう、これで大型を釣るそうです。それからは1回くらい石に当たるように引くそうです。仕掛けはほとんど根掛かりしていません。1投ごとに掛けているのを「すごいなあ」と溜息混じりで見とれているのは私だけではありません。


  • 竿の振り方

  •  この竿の振り方を見れば上手下手が解ると言われます。普通、下図の3通りがあります。どれも上図の引き終えた5の位置からの動作です。竿とラインの色を変えて説明します。

    1・・・竿を持ち上げてやや後ろに引き上げて反動を付け振り子のように沖へ振ります。良いか悪いかは変わらないそうですが、ハリはナマリの下流に位置します。下流からの強風のときは仕掛けが絡みやすいのでこの方法は避けます。また、吊している仕掛けを一度止めてから逆の力で沖に振りますから体力を消耗する。振り込みやすいですが終日この方法で釣れば腕が棒のようになります。

    2・・・一番多く使われている方法。全ての動作は振り子です。仕掛けを身体の前を通過させるところが特徴。一連の動作は止まらずに流れますので無理な力が掛からない。体力を消耗しないので終日釣っても大丈夫。ただ慣れるまで時間がかかりそうです。

    3・・・ナグリの語源はこの釣り方にあると思います。仕掛けを身体の後ろを通過させて振り込む方法。後ろを振り回して投入する動作が川面を殴っているように見えるからでしょう。ただ後半の動作は殴るのではなく振り子で投入すると綺麗に投入できます。落ち鮎は夜も掛かります。夜にナグリをするときはこの方法でないと危険です。仕掛けが見えないので自分の身体を掛けてしまう場合があります。身体を一回りさせて投入すれば大丈夫、夜は瀬肩に子持ちのメスがいます。産気づいたらオスの待っている瀬に降りていきます。夜にこの瀬肩のメスを釣る楽しみが増えるのは間違いないです。

     ナマリは静かに着水させること。増水時なら大して変わらないが渇水時などではポチャンと言うだけで鮎は散ってしまいます。そして、プロと言われる人の動作は流れるようで無駄がない。見ていて実に美しいと感じます。私は友釣りより遙かに難しい釣りだと思います。


  • 取り込み


  •  タモで受ける、手元に寄せてすくう、河原に放り上げるとか、釣れさえすれば何とかなるでしょう。


  • こんなのも夢じゃない